福岡高等裁判所宮崎支部 昭和62年(行ソ)1号 判決 1988年3月30日
宮崎県西臼杵郡高千穂町大字三田井一二六五の五番地
再審原告(控訴人)
伊藤イエノ
延岡市東本小路一一二番地の一
再審被告(被控訴人)
延岡税務署長
講上諭
右指定代理人
下田稔
松下文俊
土井健
中村茂隆
溝口透
宮崎県西臼杵郡高千穂町大字三田井一三番地
再審被告(被控訴人)
高千穂町長
甲斐畩常
右指定代理人
藤野茂
佐藤茂
右当事者間の当庁昭和六〇年(行コ)第二号課税処分取消請求控訴事件(第一審宮崎地方裁判所昭和五九年(行ウ)第四号)につき昭和六〇年八月九日言渡しの確定判決(以下「原判決」という)に対し再審原告から再審を求める申立があったので継ぎのとおり判決する。
主文
本件再審請求を棄却する。
請求費用は再審原告の負担とする。
事実
再審原告は別紙再審訴状のとおり陣述し、再審被告らはいずれも「本件再審の訴えを却下する。再審費用は再審原告の負担とする。」との判決を求め、「本件再審原告の不服事由は再審事由に該らない」と述べた。
理由
別紙再審訴状によれば、再審原告の請求趣旨は「(一) 原判決及び第一審判決を取消す。(二) 再審被告延岡税務署長が再審原告の昭和五五年分の所得税、昭和五九年八月二〇日付の延滞金及び利子税についてした各賦課処分を取り消す。(三) 再審被告高千穂町長が再審原告の昭和五六年分の町県民税及び国民健康保険税についてした各賦課処分を取り消す。」旨の裁判を求めるものと善解し得る。
再審原告は原判決には民訴法四二〇条一項五号、七号の事由があると主張する。しかしながら記録によれば第一審判決は「(一) 再審被告延岡税務署長に対する訴につき、昭和五五年分所得税については再審原告の確定申告に基づき確定したこと、その余の延滞金及び利子税の納付催告についても再審原告が延納の届出をし、その届出期間経過後に至って納付したことによって自動的に生じたことは当事者間に争いがないので、いずれも取り消しの対象たる行政処分を欠くことが明らかであり、(二) 再審被告高千穂町長に対する訴についても、町県民税については再審原告の昭和五五年度の所得税確定申告(当事者間に争いがない)に基づき自動的に算出確定されたものの納付通知を発したもの、国民健康保険税については成立に争いのない甲第三号証及び弁論の全趣旨によつて前記確定申告による所得金額を算出基礎として地方税法七〇三条の四によつて算出して納付通知をしたものであつて、いずれも取り消しの対象たる行政処分を欠くことが明らかである。」としてそれぞれ訴を却下し、原判決は右第一審判決において当事者間に争いがないとされた延滞税及び利子税の納付催告のなされた経緯に関する事実を成立に争いのない甲第四号証の一及び弁論の全趣旨によつて認定し、第一審判決挙示の「甲第三号証」を「甲第三号証の一」と改めたほか第一審判決理由と同一の理由で第一審判決を是認して再審原告の控訴を棄却したものであつて、これによれば原判決(その引用する第一審判決を含む)は、当事者間に争いのない事実のほかは、甲第三号証の一、甲第四号証を事実認定の証拠に挙げているのみで、他の証拠を判断の資料としてはいないところ、再審原告の主張は右原判決が判断の基礎とした証拠につき民法四二〇条一項第七号の事由があるとの主張ではないし、又、同第五号の主張とみられるところも、結局のところは当事者間に争いのないとされた確定申告の内容に関し延岡税務署員の教示についての不服をいうものと解されるが、再審原告が右確定申告をした事実を明らかに争わなかったことについて同号所定の事由があることをいうものではない。
よつて再審原告主張の再審事由はこれを認めることができず、本件再審請求は理由がないので、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 澤田英雄 裁判官 栗田健一)